田中 典子 教授

英語英文学科
田中典子教授
日・英のコミュニケーションの仕方の違い
言葉がさまざまな場面で実際にどのように使われているかを研究しています。例えば、「挨拶する」「頼む」「謝る」…などの仕方は言語・文化によって異なる可能性があります。


教員インタビュー

Q1

学生時代の思い出や打ち込んだことについて教えてください。

 私が最後の学位を取ったのは39歳の時でしたので、とても長い「学生時代」を過ごしたことになります。20代の頃は自分が何をしたいのかよく分からず、大学生になってすぐに入部したマンドリンクラブも1年くらいで止めてしまい、あまり「打ち込む」ということのない生活でした。ずっと「なにか打ち込めることはないだろうか」と探しているような日々でした。
 24歳で高校の英語の教員になり、それから必要性を感じて英語教授法に興味を持つようになりました。32歳の時にオーストラリアに留学して言語学にも興味を持ち、34歳と38歳の時にイギリスで言語学を学びました。さまざまな国の友達もでき、とても豊かな日々だったと思います。忙しかった30代を振り返ると、よくあんなエネルギーが私にあったと感心するというか、呆れるというか・・・。

Q2

先生が、ご自身の専門に取り組むようになったきっかけを教えてください。

 大学院の修士課程を修了してから、当時の「国立国語研究所」で日本語教師養成のための研修生になりました。とても良い研修だったと今は思うのですが、当時は大学院で研究していた英文学と研究所での言語学的な授業との落差についていけず、1年間の研修を3ヶ月で止めてしまいました。しかし、受けていた授業の中に「語用論」があり、それが心に残りました。例えば、タクシーに乗って運転手さんに指示する時、「その先に信号があります。そこを曲がってください。」と言うのと、「その先に信号がありますよね。そこを曲がってください。」と言うのとでは、プロとしての相手の知識に対する配慮が違う、という話を今でも覚えています。(どう違うか、考えてみてください。)
 その後、オーストラリアへの留学でもその分野に触れ、イギリスではそれを専門的に勉強し、結果的に生涯の研究分野になりました。この経験を振り返ると、無駄な回り道をしてしまったと思っても、そこで自分にとって大切なものに出会うこともあるのだということを痛感します。

Q3

研究テーマの魅力や面白さはどのようなところにありますか。

 私の専門分野の「語用論」には様々な対象や研究方法がありますが、私がこれまで研究してきたのは、身近な言葉のやりとりを材料に、その中での理解や誤解の問題を考えるというものです。この研究には実際のコミュニケーションを改善する可能性があります。例えば、日英の異文化間コミュニケーションではどのようなことが原因で誤解が生じやすいかをよりよく知ることができれば、その改善に繋げることができるかもしれません。
 最近では、認知症だった母との会話をデータに研究しています。母は2014年に他界しましたが、2年ほど近くに暮らしました。当時、私には精神的なゆとりがなく、うまくコミュニケーションを取れなかったことも多く、その時の会話を振り返るといろいろ反省することがあります。どうすればより良かったかを考えることで、介護に携わる人に役立ててもらえたら嬉しいです。
田中典子教授-1

Q4

学生へのメッセージをお願いいたします。

 最近、アゴタ・クリストフの『どちらでもいい』という短編集を買いました。この作家には『悪童日記』で衝撃を受けてからずっと興味を持っていたのですが、今回はこのタイトルに惹かれたのです。クリストフはこの作品の中で「どちらでもいい。どのみち、どこへ行ったとて、居心地はよくない」と否定的に用いていますが、私はこの言葉を違う意味に捉えました。
 私は若い時、決断することがとても苦手でした。でも60代になって振り返ると、決断できずにひどく悩んで苦しかったことも、結局のところ「どちらでもよかった」のではないかと思うことも多いのです。そう言うとあまりにも主体性がないようですが、どのような道を行っても必ず何か得られるものがあると感じるのです。とは言っても、若い皆さんには、その時々の選択に真剣に向き合って悩んでほしい。「でも、きっと大丈夫だよ」というのが私からのメッセージです。

教員紹介


氏名
田中 典子
フリガナ
タナカ ノリコ
職種
教授
所属
英語英文学科
取得学位
博士(言語学)
学位取得大学
ランカスター大学(The University of Lancaster)
最終学歴
ランカスター大学 博士(The University of Lancaster, Department of Linguistics)
専門分野
語用論
研究テーマ
異なる文化における発話行為の語用論的違いに焦点を当てた研究を行なっている。例えば、英語話者と日本語話者では、謝罪・依頼の仕方がどのように異なり、 それによってどんなコミュニケーション上の問題が予測されるか、などの調査研究がある。また、性差、世代差なども、ある種の「文化差」と捉え、男女の違 い、高齢者とのコミュニケーションなどにも興味を持っている。
所属学会(役職)
及び受賞歴
【所属学会】
International Pragmatics Association
大学英語教育学会

【受賞歴】
ELEC賞(1987年)'Politeness:some problems for Japanese speakers of English'の論文に対して
主要業績
・The Pragmatics of Uncertainty.(単著)Shumpusha 2001年3月
・『プラグマティクス・ワークショップ』(単著)春風社 2006年6月
・"Apologies in Japanese and English”(共同研究)in Culturally Speaking, Continuum 2008年8月
・『はじめての論文:語用論的な視点で調査・研究する』(単著)春風社 2013年4月
・「高齢の母と娘のコミュニケーション(2)―『感謝表現』に見られる関係の非対称性 ―」『清泉女子大学紀要』第62号 2014年12月
・「高齢の母と娘のコミュニケーション(3)―グライスの「質の行動指針」に焦点を当ててー」『清泉女子大学紀要』第63号 2015年12月
・「高齢の母と娘のコミュニケーション(4)―認知症とポライトネス ―」『清泉女子大学紀要』第64号 2017年1月

【翻訳】
・『語用論入門』(共訳)研究社 1998年5月
・『異文化理解の語用論』(共訳)研究社 2004年4月
・『ポライトネス-言語使用における、ある普遍現象』(共訳)研究社 2011年9月
社会活動、
文化活動等
・『すぐに話せる英語スピーキング』(共著)日本英語教育協会 1990年5月
・『ハローの後の3分間英会話』(共著)北星堂書店 1991年4月
・『文部科学省検定済教科書 高等学校外国語科用 Screenplay: Oral Communication I』(共著)スクリーンプレイ 2003年3月
・『文部省検定済教科書:高等学校 Progressive Oral Communication A』(共著)尚学図書 2006年3月
・『文部科学省検定済教科書 高等学校外国語科用 Screenplay: 英語I』
(共著)スクリーンプレイ 2006年3月
・『留学英会話ハンドブック』(改訂版)(共著)研究社 2010年3月
・『父のアルバム』(単著) 春風社 2015年9月
・『母のアルバム』(単著) 春風社 2016年12月(日本自費出版文化賞入選)